独占欲強めな同期の極甘な求愛
「離してほしかったら、私に譲るって言ってください」
「いやです」
それだけは譲れない。それがなくなってしまったら、今後私も臣との繋がりがなくなってしまう。二人で一緒に入りられる唯一の空間。手放すわけにはいかない。歯をギュッと食いしばり、キーホルダが手の平に食い込む痛みに耐えた。
「里村、離せよ」
と、その時。低い声とともに大きな影が私を覆った。ハッとして顔を上げると、そこには険しい顔をした臣が立っていた。
「と、都倉くん」
焦ったように里村さんがキーホルダーから手を離す。そして気まずそうに後ずさった。
「あの、これは冗談で……」
「冗談? いい大人がどんな冗談だよ」
眉間にしわを寄せそう言いながら里村さんを見下ろす。
「美麗は俺の大事な人だ。だからこれ以上困らせないで」
そしてそうきっぱりと言い放った。大事な人って……。臣を見つめる瞳がジワリと幕を張る。
「ご、ごめんなさい。でも私も都倉くんにご飯作りに行ってあげたくて。それだけなんです」
涙声になりながら里村さんが言う。
「気持ちだけ受け取っておく。でも俺、美麗じゃなきゃダメだから」
臣がそう言うと、里村さんは唇をギュッと噛みしめた後、わかりましたと言って駆けて行った。
なんだかその後ろ姿が切なかった。きっと彼女だって私と同じようにただ臣が好きで、私と同じように必死になっていただけなんだ。