独占欲強めな同期の極甘な求愛
「きちんとお願いします」
「次は気を付けるよ、白鳥さん」
「……っ」
社内で支持を得ている都倉さんの王子スマイルを正面から受けると、出かかっていた言葉は怖気づいたように胃の底へスルスルと流れて行った。
悔しいけど、かっこいいんだ。それに長身ときたものだから、こんな風に女の子に囲まれるのも無理はない。見慣れた光景だ。
「で、用はそれだけ?」
「……はい、以上です」
「そう。ご苦労さま。ごめんね、俺のためにわざわざ来てもらって」
その口調にムカッとして思わず言い返したくなったけど、女の子の用が済んだなら早くどっかいけよと言わんばかりの視線に悪寒を感じた私は、来た時と同様の足取りで企画部を後にした。
「怖っ。あれって経理の白鳥さんだよね? 相変わらず仕事人間だし、地味だねー」
だけどその間、聞こえてきた女子社員の笑い声に思わず耳がピクつく。
「ちょっと真面目すぎて怖いよね。都倉くんにもあの冷徹さだし」
「絶対処女だよ、あれ」
握りしめていた申請書が、拳の中でぐしゃりと音を立てる。だけど反論の言葉も見つからない。だってどれも真実だから。
私、白鳥美麗(しらとりみれい)は、ここ大手飲料メーカーの経理部に勤めている。
名前だけ聞くと華やかで美人だと連想されることが多い。だけど実際はその名前とは正反対で、地味で華やかさの欠片もない。完全に名前負けしていて、この名前がコンプレックスだ。