独占欲強めな同期の極甘な求愛
「うわ、うまそ」
シャワーからでてきた臣は、テーブルに並べられたご飯を眺めながら腰かける。
「この日を待ってました」
「そんな、大袈裟な」
謙遜するも、ニヤケ顔が収まらない。
「地味なお前の特技が料理だなんて、誰も思わないだろうな」
一言余計だと思いながら、冷蔵庫から取り出したお浸しを臣の前に差し出す。臣はさらに、これもうまそ!と嬉しそうな声を上げた。
臣の言うように私の得意なものが料理だなんて会社の人はもちろん、誰も知らない。
だけど例え知られていたとしても、私は臣にしか手料理を振舞いたくない。
彼だから毎週ノー残業デーの水曜日は張り切って買い出しに行くし、料理を作っているのだ。
まぁそんな本音、臣には口が裂けても言えないけれど。
「いただきます」
子供のような笑顔で箸をつける臣を、満足げに眺める。
こんな無防備な臣の姿を見られるのは、幼馴染の私だけの特権だと思うと会社の子たちのヒソヒソ話や、悪口はちっとも気にならない。
会社の王子と呼ばれる都倉臣を独り占めできる唯一の時間。だけど決して付き合っているわけじゃない。無論、私の片思いだ。しかも約20年来の……。