独占欲強めな同期の極甘な求愛
「あのね、江頭さん。自分が任された仕事は最後までやらなきゃ。ちょっと、椅子持ってきて。教えながらやるから」
かなり譲歩したつもりだ。だけど江頭さんはムッと口を尖らせた後、無理ですと言い放った。
「無理って……。そんなんじゃいつまでたっても覚えられないよ? 私も一緒にやるから」
「私別に一生ここで働くつもりありませんし、それに今日大事な用があって」
そこまで言うとどこからか、キャーと黄色い歓声のような声が響き渡った。何事かとキョロキョロしていると、隣にいたはずの江頭さんが微熱があるとは思えないほどの俊敏さで課を出て行こうとしていた。
「ちょ、江頭さん!」
「白鳥さん、あとはお願いします!」
「はぁーーー?」
いったいなんなんだ? ていうか、全然元気じゃん! 呆れを通り越し、怒りでこぶしをギリギリ握っていると、それまで黙って聞いていた三井さんが口を開いた。
「あーそうか、今日だったね」
「え? なにかあるんですか?」
「ほら、うちのCMに楪くるみがでるだろ? その関係で彼女がここに来るんだって。対談とか言ってたな」
そうだったんだ。じゃあさっきの黄色い声は、彼女がここに現れたとか? さすが今を時めくアイドル。とはいえ、私は名前しか知らない。顔を思い出そうにも思い出せない。
「俺も見てこよーっと」
「あ、もう三井さんまで!」
「適当にやっておけばいいって。こんなチャンス他にはないよ? 白鳥さんもおいでよ」
言いがなら鼻歌でも歌いながら行ってしまった。もう、みんなして!