独占欲強めな同期の極甘な求愛
「老朽化ですかね、うちの会社古いですから。それより、楪さんが乗ってなくてよかったですよ」
「本当ですよね。スケジュール詰まってますから、彼女」
アイドルが会社のエレベーターに閉じ込められたなんてことになったら、ネットニュースものだ。損害賠償を起こされてもおかしくないかもしれない。
「ちょっと寒くなってきましたね」
「空調も止まってしまったんでしょうね」
寒さをしのぐよう二人で体を寄せ合い膝を抱えて座る。こんなことになるなんて思いもしなかったからコートも着ていないし、スマホも持っていない。花笑ちゃんも同様で、私以上に軽装だ。
「カーデガン、貸しましょうか」
「いえ、そんなことしたら白鳥さんが寒いですよ」
「私は頑丈なので大丈夫です。風邪なんて小学生のころからひいてません」
何自慢だとセルフツッコみしつつ、花笑ちゃんの肩にカーデガンをかける。
「ありがとうございます、すみません」
「すぐ動き出しますよ」
「そうですね」
とは言ったものの、かれこれ20分は経過していた。いったいどうなっているんだろう。花笑ちゃんには言えないけど、エレベーターが止まるなんてこと、私が入社してからはなかったはず。毎月メンテもしているし。臣も心配しているかもしれない。目の前でこんなんことになったんだから。
ふと臣の顔が頭をよぎる。と、同時に花笑ちゃんは私が守らなければとういう、使命感のようなものが沸いた。臣の大切な人になる予定の人だ。臣の代わりに私が守らなきゃ。是が非でも。