独占欲強めな同期の極甘な求愛
「お、月が綺麗だなー」
「ね。綺麗だね。私もさっき見てたところ」
こんな風に並んで帰宅するのは何年ぶりだろう。小学校の時は同じ登校班だったから必然と一緒だったけど、中学になってからはお互いに部活もあったし、そもそも臣に近づけるような雰囲気じゃなかった。
ファンクラブみたいなものがあって、臣に話しかけようものなら会員に呼び出されるという噂があり、怖くてできなかった。幼馴染なのに遠くから見るだけだった。いつも隣にいた人がいつのまにか遠い存在になっていって、気が付けば卒業してたっけ。
「そういえばさ……色々聞かれなかった? 花笑ちゃんに」
言いづらそうに頭を掻きながら臣が言う。きっとこの前のエレベーターでのことを言っているんだろう。
私だって聞きたいことは山ほどある。どうしてあんなことをしたのか。水曜日、家に来たときにでも聞けばよかったものの、結局聞けず仕舞いで複雑な心境のまま今に至る。
「うん……聞かれた。誤魔化せなくて幼馴染だって言っちゃったからね」
「そうなるだろうなーと思ってた。だから今日美麗の悲鳴聞いたとき、なにかあったんじゃないかって心配になって」
「え?」
……それはどういうことだろう? 思わず足が止まる。と同時に、臣が思い立ったようにそうだ! と明るい声で言った。
「美麗。飯食った? なんか食いに行かね? 二人で打ち上げしよう」
二人で? 今まで一度もそんなことしたことなかったのに、いったいどうしちゃったんだろう。