明日こそ、キミに「好き」を届けます。
story*3 明日、キミに伝える。
「……篠山、行くぞ」
帰りの挨拶が終わったその瞬間、桜庭は私の手を掴んでそう言ってきた。
桜庭が立っているから、珍しく私が見上げる形となっている。
「あっ、うん……」
少しだけ周りの視線を気にしながら、私もそっとイスから立ち上がった。
「寒……っ」
学校を出てすぐ、強い風が吹いてきて、私の髪を大きく揺らした。
ジャンパーを着て、マフラーも身につけているものの、やっぱり手袋がないと指先が冷える。
はぁー……、と息を吹きかけるが、すぐに熱は冬の空気に溶けこんでしまった。
「手袋してこねぇの?」
隣にいる彼は、防寒対策バッチリの格好で、呆れた様子で言われてしまった。
「……したかったんだけど、妹にあげちゃって……」
「なんであげたの?」
私が苦笑しながら言った言葉は、桜庭の悲しげな声にすぐに拾われた。