明日こそ、キミに「好き」を届けます。
「……お母さんにあげてって言われて。妹の手はいつも冷えてるから。私の分はまた今度買うから、貸してあげてって。私、暑がりだし別に気にしてないけどね」
桜庭の悲しげな瞳が気になって、わざとらしく明るい声で私は言った。
すると、桜庭は急にその場に立ち止まった。
「桜庭……?」
何人もの人に抜かされながら、私も桜庭から一歩離れた距離に立ち止まる。
「……やる」
自分の手にはめていた手袋を外すと、桜庭はなぜかムッとした顔で私にその手袋を向けてきた。
「え?」
「篠山の手冷えてんだろ。やる」
ぶっきらぼうにそう言うと、桜庭は一歩私に近づき、強引にも私の手にその手袋をはめてきた。
「ちょ、ちょっと……!」
「人の親切は素直に受けとれ。ばーか」
私の両手に手袋をはめた桜庭は満足そうに笑うと、私を置いてスタスタと歩きだした。