明日こそ、キミに「好き」を届けます。
そんなことを少しだけ考えて、時計を確認した私は、そろそろ帰らなきゃと思い、教室をあとにした。
「よぅ、絵美ちゃ~ん」
「……アンタ、なんでここにいんの?」
廊下を歩いて、階段を下りて、昇降口を抜ければあとは家路に着くだけと思っていた私の目の前に、なぜか「サル」が立ち尽くしていた。
昇降口付近には、他に誰もいない。
さっきは焦って教室から飛び出したくせに、誰か友達でも待ってんの?
「先帰ろうと思ったんだけど、やっぱりやめた」
「は……?」
校門のほうを見つめながら、桜庭がきっぱりとそう言う。
私の頭がそれについていけないでいると、ふいに桜庭がこちらを振り返った。
「……篠山」
突然の苗字呼びに胸がドキッと音を立てる。
……桜庭が私のことを苗字で呼ぶのは、他に人がいるときか、まじめな話をするときだけ。