イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
彼は踵を返すとさっさと歩き出す。
その背中を追いながら私はちらっと後ろを振り返り、ファンタジー小説を読み漁ってた頃のことを思い出した。


中学時代、私は図書委員をやってた。
当時は大人しくて、あまり人と会話するのが得意でなかった私が、学校内で一番落ち着ける場所が図書室だった。

そこで借りられた本を片付けながら黙々と読んでたのがファンタジー。
自分が今居る場所ではない世界の話を読むのが好きで、そこにのめり込んでしまい、時には主人公になりきるのがクセだった。


(まさか、それを今泉君に見られてたなんて……)


読みながら喜怒哀楽を顔に出してた筈だと思うと顔から火が出そうなくらいに恥ずかしい。
たまにブツブツ文句言ってたり、クスッと笑ってたのも見てたのかもしれない。


(それはそれでヤダな)


顔を熱くさせながら本屋を出ると、彼は駐車場にシトロエンを停めてて、相変わらず「乗れよ」と命令口調で促してくる。

こっちはそれに頷きを返しつつも胸が鳴る。
この間の夜、車内で彼にキスされた記憶をまだハッキリと覚えてるからだ。


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