イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
「う〜ん、トロトロ」


美味しい〜と喜ぶ私の向かい側で、同じく湯葉料理を頬張る今泉君。上品過ぎて腹に溜まんねぇ…と呟く彼を眺め、イヒヒ…と胸の中でほくそ笑んだ。


(私にいつまでも揚げ物禁じるからいけないのよ)


ざまーご覧…と湯葉で巻いた野菜の炊き合わせを齧る。
中身の野菜は、人参にインゲンに椎茸。
この最近毎日のように見かけてるものばかり。


(あーあ、少しでいいから揚げ物食べたい)


ジューッという油の弾ける音が聞きたい。
カリッとした歯応えとふわっと口の中に広がる油の香りが懐かしい。


思い出しながら、あーあ…と肩を落としてると、次の料理が運ばれてきた。


「湯葉の巻き揚げで御座います」

(えっ!)


巻き揚げ!?
あ…揚げ物!?


ハッとしてテーブルを見ると、多分と思うが、鶏肉のつみれを湯葉で巻いて揚げたらしいもの置かれてる。


「うわぁ…」


口にしていいの?
置かれたってことは食べないとダメだよね?


じーっと目線を前に向けドクターの顔色を窺う。
向こうは私の視線など気にすることもなく口の中に巻き揚げを放り込み、パリッといい音を立てて食べ続けてる。


< 105 / 241 >

この作品をシェア

pagetop