イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
「葵ちゃん、家に帰るところか?」


目線を向けてくる朝川先生に、はい…と返事をしたまでは良かった。
じゃあ一緒に…と、彼が言い出したところでギュッと二の腕が握られ、ビクッと背筋を伸ばして横を見た。


「俺、まだ話があるから」

(え?話?)


何それ…と思いつつ目が点になる。
まるで彼は無言のまま怒ってるような気がして、オロオロしそうになりながら、朝川先生に向いて、「すみません、また」と挨拶した。


「…ああ、じゃあまた」


朝川先生はアッサリした感じで踵を返すと歩きだす。
その背中を見送ってると更に二の腕を握る手に力が込められ、痛いんですけど?と思いつつ、今泉君の方へと向き直った。


「……あいつか?」

「へ?」


キョトンとしたまま呟きに疑問の声を発する。彼はぎゅっと唇を噛むと腕を離して、寒いから車に戻って…と言いだすではないか。


(どうして?ここまで送ってきてくれたのに)


私の実家、此処から百メートルもないんだよ?と首を傾げつつも、何だか怒ってる雰囲気の彼に逆らえずに車に乗り込む。


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