イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
(カラッと揚がった唐揚げに香辛料の効いた中華料理、天ぷらでもいいし、トンカツ屋さんでも良かったのに)


これまでの三週間近く、ずっと我慢し続けてきた食べ物を思い出し、ジュワッと口腔内に唾液が溢れ出す。


(…あ、しまった。今泉君のことを考えてる最中だった)


つい思考が逸れた…と思うが、彼との晩餐はこの間の湯葉が最後だ、きっと。


(あんな精進料理じゃなくて、もっと御馳走食べたかったな。イケメンなドクターに誘われてディナーとか、憧れてたんだけど……)


まあ、お一人様ディナーでも仕様がないか…と肩を落としてその週を終え、金曜日になって今泉クリニックへと足を運んだ。




「望月さん」


看護師に名前を呼ばれ、はーい!と返事して診察室に入ると、そこには白衣を着たグレーヘアの医師が居て、黒の肘掛椅子に座り、パソコンとカルテを見比べて操作してる。



(あれ…?)


この人誰?と思わず目を見張り、代診の先生?と思ったんだけど__。


(あ、そうか。代診は今泉君の方だった)


それじゃ、この先生が本来のドクター?と見つめたまま、丸椅子にも座らず突っ立ってると。


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