イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
そういうことが一度だけあった。
あれは思い出すと恥ずかし過ぎて堪らなくなるから、二度とやらないつもりで記憶に蓋をしたんだ。


(すっかり忘れてたよ)


思い出すと急に冷や汗が湧き出すというか、背中がゾワゾワとこそばゆくなる。


「俺、あの時の葵の恥ずかしそうに笑ってる顔が印象に深く残ったんだよな。別に凄く可愛かった訳でもないし、面白い奴…くらいの感じだったんだけど」


話しながら笑う彼の声を聞き、別に凄く可愛くもない?と変に引っ掛かった。


(どうせ私はフツーの女子でしたよ)


どうせどうせ…と頭の中でイジケながら、変なとこ覚えてるなぁ…と口を噤む。


「でも俺、それで葵に興味を持ったんだよ。だから図書室に行く度、葵ウォッチングをするのが面白くてさ」

「えっ?ウォッチング?」

「そう。葵は本読みながら感情がダダ漏れだったから、見てて本当に可笑しかった」


喜怒哀楽が顔に出てた、と指摘され、思わずかぁーっと顔の温度が高くなる。


「しゅ、趣味悪っ!」

「でも、それで多分葵に惚れたんだと思うぞ」

「ええっ?!」

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