イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
「あら。いらっしゃい」


明るい女性の声で迎えられた私達は、こっちへどうぞ…と誘う相手の前に座った。
カウンター席の真ん中では、コックコートを着て、下半身はブラックのギャルソンエプロンを身に付けた女性が、満面の笑みを浮かべて立っている。


「珍しいわね。予約入れての来店なんて」


初めてじゃない?と微笑む相手は、私達よりも年上そうで、唇の側にホクロがあるのが印象的な感じの人。


「それに女性と一緒なんて久し振りに見たかも」


ニコッと微笑まれ、顔を引攣らせつつも「久し振り」という言葉に引っ掛かりを覚えた。


(私以外の人とも、この店には来たことがあるんだ)


そりゃ彼はモテるもんね…と諦めつつ、それってやっぱり元カノなんだろうか…とイメージした。


「洸ちゃん、今日はステーキディナーでいいの?」


足元の冷蔵庫から牛肉を取り出した相手は、それを自分の前に置いたまな板の上に乗せ、これでいい?と確認してくる。綺麗な差しが入ったロース肉は、絶対にA4かA5ランクだと思えたんだけど__。


「…あ、今日はヒレ肉でお願い」


それじゃない方で…と告げ、私は思わず彼を見遣った。


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