イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
「……葵?」


ムッとして黙り込んでた所為なのか、やけに大人しいな…と彼が横から覗こうとしてくる。
その目線から逃れるように顔を背け、別にステーキのことで怒ってるんじゃないよ…と思いつつも、多少はそれも入ってるかもな…と苦笑した。


外をチラ見してみれば、彼の運転する車はいつの間にか白金記念病院の前を通り過ぎ、交差点を左折して住宅が並ぶ場所へと進んでいる。

この辺りに住む部屋があるのかな…と思いながらも、目線を合わせないようにずっと外を向き、「なぁ…」と問いかける声にも振り向きもせず、「何?」と低く声を返した。


「どこか具合でも悪いのか?」


ドクターらしく体調を気にしてくる彼。
指先を伸ばしてきて右手の甲の上に置き、大丈夫か?と優しく訊き重ねてくる。


(別にどうもないのに…)


心配されると余計に心配かけたくなる。
また胃が痛いと言って彼を困らせ、このまま自分の部屋まで送って行って貰おうか。


(帰りたくもないのに)


そう思うと何だか泣きそうな気分になった。
やっと彼の彼女になれて、二人だけで過ごそうと言って貰えたのに。


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