イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
まさかあの車の持ち主が、金持ちのお坊ちゃんで遊び人風情だと思ってました、とも言えず、ハハ…と笑って誤魔化し、歩き始める彼の背中を追いかけた。




「乗れよ」


運転席側のドアを開けた彼は私を振り向いて促す。
こっちは助手席側のドアに近付いて、うん…と言ったものの迷いが出てきて、本当に自分が乗ってもいいんだろうかと躊躇う。


(だって私、モデルの様に美人でもなければスタイルも良くない!)


いや、別にそうでなければいけない理由もないんだけど、この色っぽい車に乗り込むには、それなりに勇気も必要で……。


「早く」


私が乗らないと出掛けられないだろ、という顔つきで勧められ、えいっと思いきってドアを開ける。すると、内装の革張りシートが視界に飛び込み、国産車にはない広々とした助手席と、ふわっと香るムスク系の匂いにクラッ…とした。


「…し、失礼します!」


職員室に入る子供以上に緊張しながら背中を屈ませる。

今泉君の車は3ドアのコンパクトカーの割には中が本当に広くて、しかも内装の一部にボディと同じカラーが使われていて、オシャレを通り越して、軽い拘りみたいなものを感じさせた。


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