イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
彼はそんな私に視線を落としたまま、ふぅん…と唸り、そうそう…と声を重ね、食事した?と訊いてくる。


「食事?」

「まだなら一緒にどう?俺もまだ食べてないんだ」


この近くでいいなら行こう、と誘われるが、夕食なんて食べる気分でもなかった私は首を横に振り、別に食べたくもないからいい…と断り、歩き出そうとした。


「待てよ」


さっと手を取った彼に驚いて振り返る。
ドクターは私のことを真っ直ぐ見下ろすると眉間に皺を寄せ、「体調でも悪いのか?」と更に質問。


「ううん、どこもどうもないよ」


胃が痛むなんて間違っても言えないと思って言い返すと、よしっ!と言った彼は私の二の腕を掴んだまま、「いい所へ行こう!」と言い出すではないか。


「えっ、いい所?」


こんな時間に行くいい所って何処さ、と面食らいながら思う。
断るのも忘れて唖然としてると、彼は声を上げてこう言った。


「ちょっと病院内で待ってろ。支度して来るから」


手を握ったまま、路肩に止めた軽自動車まで連れて行かれる。

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