六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
「誰にも?」
それって、さゆも知らないってことか?
そういやこいつ、『俺のさゆ』がどうの言ってたな……。
「……晃さ、さゆのお母さんにあったこと、知ってる?」
「ん? ああ……一応、って感じだけど」
小雪さんと、その彼氏だった男のことだろう。
小雪さんは大学生の頃、別の大学の同い年の男と知り合って、付き合いはじめた。
就職しても付き合いは続いたらしいけど、さゆがお腹いるのがわかってそのことを打ち明けたら、「結婚する気はない」って一蹴されて、そのまま連絡は途絶えた。
小雪さんは、さゆが二歳になった頃実家へ戻るまで、本当に一人でさゆを育てて来た……。
旭は頬杖をついて、手の甲に顎を載せた。
「俺ん家も同じ状況でさー。マジ、父親ほどいらない存在ってないよね」
「それわかる。うちも、父親がすげー酒乱だった。普段はいい人装ってるのに、少しでも酒入ると暴力三昧。サポート系の支援団体が間に入ってくれて、母さんもやっと離婚出来た」
「あー、やっぱそうなんだ」
と言うことは旭も、俺とさゆの近さの理由にはなんとなく気づいていたんだろう。