六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】



……傘、持ってくりゃよかった。


旭と別れて、買い物で憶えていたものをテキトーに選んで帰ろうとしたら、スーパーの外は土砂降りだった。


……最近の夏だな。


傘、持たずに来ちゃったから雨宿りしていくかな……。


右手に袋(さゆに渡されたエコバッグ)を持って突っ立っていると、どうしてもさっきの話が頭の中をぐるぐる回る。


旭は、さゆの半分血の繋がった兄貴。俺を、さゆの相手として認めていた。


旭が転校してきた理由は全部今まで聞いたことに嘘はなく、母親が結婚した相手の実家に移り住むため、小学生当時住んでいたこの近くに越して来た。


離れても妹のことは気にかけていて、もしさゆがまだこの辺りにいるようだったら、と、巽に連絡してさゆが在籍する高校を知り、そこに巽もいると知って転校を決めた。


一年の七月の休み直前っていう妙な時期の転校になったのは、母親の結婚関係の手続きが少しスムーズにいかなかったかららしい。


今は問題なく過ごしているそうだけど。


……旭も、旭の母親も、俺やさゆや、母さんや小雪さんと近い、大変な思いをたくさんしてきたみたいだ。


……旭なら本気で全部譲れるって思ったのに。


なんでこんな展開になるかなあ……。


「……くん、晃くん!」


間近で叫ばれて、思わず肩が跳ねてしまった。


え?

< 113 / 266 >

この作品をシェア

pagetop