六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
それだけ口にして、さゆはしゃくりあげながら泣いた。
言葉は、それだけだった。
どれくらい経ったか、さゆの嗚咽が収まった頃、ゆっくり腕を離した。
近くのティッシュ箱から数枚抜き取って、さゆの顔を拭く。さゆはされるがままだった。
「……旭から、聞いたんだ?」
「……晃くんは知ってたの?」
「少し前に、旭から聞いてた。小雪さんから言わないように言われていたって聞いたから、俺も黙ってた」
「………」
「さゆ、旭のこと好きだったんだな?」
「………」
さゆは答えずにうつむいた。
俺から続きを問うことも出来ず、これ以上訊いたら問いただすって感じになりそうだから、黙っていた。
「……小学校のころ、旭だけがライバルだった」