六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
……けど晃くんは少し離れた場所で止まって、書架を見上げている。
あ、喋りかけたりはする気ないんだ。それもそうか。中学んときから私、本当にしつこく言っているし。
……こんな扱いされて、晃くん、なんで私に愛想つかさないんだろ。私だったら……。
――トントン。
注意を引くみたいに、棚を爪で叩く音がした。
そっとうかがうと、晃くんが横目で私を見ていて、何かを人差し指で指した。
ん? と思っている間に、晃くんは踵を返して、別のコーナーへ行ってしまった。何かあるのかな?
そそそ、と横に移動して晃くんが差したあたりを見上げる。
あ。
私が探していたやつだ……。
晃くんが消えた方を振り返ると、その背中が本棚に隠れるところだった。
必死にありがとうの念派をおくってから、本を手に取る。
私のことまで把握してくれているって、さすが晃くんだなあ。
家に帰ると、数分の差で晃くんも帰ってきた。