六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
お母さんがそうつぶやいたとき、お店の人がやってきた。
名前を告げると「お待ちでいらっしゃいます」と言われて、奥の方へ案内された。
その間、晃くんはずっと手を繋いでいてくれた。
「小雪さん」
お母さんの名前を呼んだのは、背の高い男の人だった。
椅子から立って、こちらへ会釈してくれたから、私も同じように軽く頭を下げた。
「圭一(けいいち)さん、お待たせ」
「全然。挨拶してもいい?」
「うん。さゆ、晃くん、こちらの方が雪村圭一さん。仕事で知り合って、長いこと助けてもらってたんだけど……半年くらい前から……お付き合いしてたの。さゆ、黙っててごめんね」
お母さんが何故か私に謝って来た。私は顔をぶんぶん横に振った。
「は、はじめまして、司咲雪です。あ、あの、晃くんも一緒にいさせてくれて、ありがとうございます」
……晃くんがいなかったら、私、ここに来る勇気も出なかったと思う。