六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】


「ううん。ありがとう」


嬉しかったよ。そう、もう一言、言いたかったのに。ありがとうって気持ちを、もっと伝えたかったのに。


……琴のコミュニケーション能力の低さでは、そこまで口にする事が出来なかった。


恥ずかしいとか、照れくさいとか、ガラじゃないとか、そういう見栄みたいなものが邪魔をして。


でも、司さんはその言葉だけで安心したように微笑んでくれた。


「よかったー。琴ちゃん、一人でいるのが好きだったらいらんお世話かなって不安だったんだ」


え……司さんでも不安とか思うの? こんな、みんなが憧れるような人が?


「そ、そんなことないっ。琴、友達の作り方とか知らなくて……一人が好きなわけじゃない」


琴だって、みんなみたいに理由なく集まって、なんでもない話をしたり、真面目な話もしたり、一緒に勉強したり、休みの日も逢ったりしたいって思う。


でも、そういうことをする友達が、琴にはいなかった。

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