六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
………。
「何か、怖いことでも思い出しちゃった?」
なんとなく自分でも憶えのある晃くんの異常に、抵抗はしないでおいた。
「雷、駄目なんだ……。父親が暴れるときの、音と、似てて……」
あ……。
……すがってきた晃くんの腕を、無理に振りほどかないでよかった……。
私は、晃くんの頭を抱きしめるように腕を廻した。
出来たら晃くんの耳をふさぎたかったけど、隙間なく抱き付いてきているからちょっと無理だった。
「そっか。いいよ、いつまででも、こうしてて」
……うん、と晃くんの小さな声が聞こえた。
私のお母さんは結婚しないで私を産んだけど、晃くんの家は両親が離婚している。
実の父親ってのが、普段はいい人なんだけど、すごい酒乱で、お酒が入ると晃くんや奏子さんに暴力を振るっていたそうだ。
普通にしていると問題がない人に見えるから警察の動きも鈍くて、女性をサポートする系の支援団体の援助を借りて、やっと離婚出来たって聞いた。
晃くんは、今も怖いんだ……。