六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
……やばいな。雷、こっちに近づいてきてる。
晃くん、私なんか全然聞こえないくらい遠い音でも、捉えて拒絶反応出ちゃうのに……。
「ねえ、晃くん。私が一方的に喋るから、聞いてるだけでいいから、無理に喋ろうとしなくていいからね? えっとね、えーっとね……そうだ! 巽の恥ずかしい話でもしてあげよう。六年以上も一緒だったから、晃くんの知らないヤツの弱みも握ってますぜ」
わざと茶化すように言って、小学校時代の思い出話を始める。
晃くんの意識が、少しでも雷の音から逸れたらいいな、って……。
「うちの小学校、四年生から部活が始まるんだけど、バスケ部と陸上部とサッカー部の三つしかなかったのね。んで、学年で一番運動神経がいい巽の取り合いが始まってね。巽、最初は三つ掛け持ちしてたんだ。それなのにバスケ部ではレギュラーになって、サッカー部でもメンバー入りして、陸上部では短距離で県大会まで出たんだよ。んで中学ではバスケ一本にして、すぐにレギュラー入りしたんだよね」
「……さゆ、それ、巽の自慢話になってる」
「え? あ、ほんとだ。あいつの弱み……ないな! 巽カンペキだな!」
自分でオチをつけられず叫んでしまうと、晃くんが、ふっと笑った。