六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
「無理? どういうこと」
「好きとか付き合うとか、考えるの面倒」
「………」
答えると、琴にやたらじとーっとした瞳で睨まれた。
「今は、さゆといるのが一番ラク。勉強とか母さんたちの会社の手伝いとかすることあるし、そういうの考えてる余裕ない」
……本音を言うと、もっと別の理由だけど。琴に話すような内容でもないしな。
「咲雪ちゃんが一番ラク、ねえ……」
「さゆは俺のこと全部知ってる。それでも、そこにいてくれる」
全部知っていて、さっきみたいに抱きしめ返してくれる。
あの優しくて強い腕を、失いたくない。
「……何にも、代えられない存在」
さゆとは友達って感じじゃないし、でも付き合ってるわけじゃないし、強いて言うなら家族が一番近いかもしれないけど、母さんとも小雪さんとも存在している場所が違う。
一人だけ、特別な場所にいる。
とても綺麗な場所に。
「……言っとくけど咲雪ちゃん、男子に人気あるからね」