六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
……そうは言ってくれても、さゆには相変らず学校では話しかけられないし、『さゆ』って呼ぶのも出来ないし。
……あー、人前でさゆって呼んで他の奴に見せたくないー。
「もしもーし。おにーさん、たぶん言っちゃいけないことが口に出てますよー」
「え……」
「女子たちには聞こえてねーと思うけど。あ、そんな瞳で見るなって。俺は咲雪とは幼馴染の古馴染ってだけだから。お前と三科みてなーなもんじゃん?」
「……だったら巽、すごい勢いでさゆに嫌われてることになるけど……」
「え……き、嫌われては、いないかな……?」
「さゆ、巽のこと好きだって言ってた」
「お前がそれ言っちゃっていいのかよ。俺も咲雪のこと好きだけど、友達として人間として、ってやつだよ。晃とは違う」
「………知ってる」
「あ、自覚あったんだ?」
「ついさっき」
「展開早ぇな」
ほんとについさっきなんだけど、わかってしまったから。
俺が失えないのは、家族じゃなくて『さゆ』なんだって。