六花の恋-ライバルと同居することになりました?-【完】
「さっきの言い方。お前がさゆの彼氏みたいに聞こえてイラッとした」
「あ、あ~ごめん。あれは彼氏って言うよりはむしろ――」
「むしろ、なに?」
「……ごめん、今は秘密」
「煮え切らねえな」
「ごめんねー、昨日の巽の言葉でわかったと思うけど、うちもちょっとややこしい感じの母子家庭でさ。さゆの家と似た感じだったんだ。だから俺が勝手に、さゆには親近感持ってて」
「今のさゆの彼氏は俺だけど?」
「うん、そこはわかってる。さゆがあんな幸せそうにしてるの、きっと晃くんのおかげなんだろうなって」
そう言って、自分の席で琴と相馬と話しているさゆの方を見る青山。
……その目が、やたら穏やかで優しく見えた。
……愛しいものでも見るような、慈しみの目だった。
「やらんぞ」
反対に、機嫌の悪い俺の声は冷えている。
「晃くんからさゆを奪おうなんて考えてないよ。ただ、『俺が持ってるさゆ』をあげるには、晃くんはまだまだってこと」