恋は思案の外




「いろは、シャンプー何使ってんの!!?マジいい匂い! いや、もしやこれはシャンプーじゃなくていろは自身の……――ぎゃんっ!」

「オイ、この変態ストーカー警察。俺のいろはに何してんだ。」

「い、ってえええええ!!グーの鉄拳は無いわ!頭蓋骨陥没するわ!!」

「てめぇ誰に向かって口利いてんだ。ていうかどっから入ってきた。ハイ、不法侵入で逮捕。」

「えっ?不法侵入? どこにそんな奴が!そいつは警察官として捕まえないと!」

「てめぇだっつの!! お前ホントに馬鹿だな!よく警察官になれたもんだよ!!」



そしてとうとう、ヒト科とストーカーの小競り合いが始まってしまった。

もうどっちもどっちだから何も言うまい。今ツッコミを挟んだらわたしの負けだ。


だけどお陰でヒト科の拘束が緩み、漸く脱出することができたわたしは、ぬくぬくと温まったこたつにようやく腰を落ち着かせることができた。



はあ、と一息ついてこたつテーブルに置かれている大量の食料をじいと見つめる。


ビールにスルメ。わたしのいつもの晩酌物がそこにはあって、これを用意したのはヒト科なのだろうか、と。

確かに以前、なんてこと無く言ったことはあるけど、奴はそれを律儀にも覚えていたのだろうか。




ビール缶に手を伸ばしプルタブを引くと、プシュッと景気の良い音がした。


右前方でヒト科とストーカーの小競り合い。

左前方でユウヤとタクミの笑い声。

外れかけた壁の輪飾り。小さなクリスマスツリーのオーナメントの光。



その様子を少し離れた場所から眺めつつ、缶を傾けてごくごくと喉を鳴らしビールを体内に流し込む。飲みながら、思わず少し笑ってしまった。





「馬鹿じゃん。」





まあ、こんなクリスマスパーティも悪くないかな。なんて。








       聖なる夜に
     (Merry Christmas!)




        * imu




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