恋は思案の外




「いらっしゃいませー」



そんな中、閑古鳥が鳴いていた店内に来店を告げるベルの音が響き渡る。

…うわ。うわうわうわ、最悪。

かの客の正体に気付いたわたしは、姿を見られないよう身をかがめて顔を逸らした。



「ちょっとー!いろは!?いろは今俺のこと見て、顔逸らしたよね!?なんで運命の相手から逃げようとするわけ!?」

「…正直、ここまでくればもう立派な犯罪だと思う。ストーカー被害出そうかな、今日の帰りに」

「は、なにィ!?誰だよ、俺の未来の花嫁にストーカーなんてする奴は!!捕まえてやる!!今すぐとっちめて──」

「お前だよ」



嫌もうかなり面倒くさいしなんか無駄に暑苦しい。早く帰らないかな。ていうかコイツ、交番からここまでだいぶ距離あるのになんで来たんだよ。




「ちょっとアンタ、今日やすみ?」

「アンタじゃないよ、ショウヤだよ」

「わかったから。なんでこんな遠くに来てんの?いいの?早く帰ったほういいんじゃない?」



ちょっと諭すようにそう口にしたわたしを見て、はたと奴は動きを止める。




< 103 / 132 >

この作品をシェア

pagetop