恋は思案の外
なんで優しい感じに接してるかって?そりゃ早く帰って欲しいからだよ。こいつが居ると今日付でわたしの首がとぶ。
「そうだった…!いろはと会えた嬉しさに、今日の目的を忘れるところだった!」
どうやら本日のわたしの運勢、あまり良くないらしい。コメントのところにはおそらく「余計な一言は慎んで」と書かれていたに違いない。
それくらいに後悔した。あ、コイツもか──そんな思いが胸奥にちらり、芽を出したのだから。
「いろは!!チョコ!!チョコちょうだい!!!」
清々しいほど軽やかにそう言ってのけたストーカー野郎は、でれっと破顔するなり両手を広げてそう催促した。
そうなると、わたしはげんなりと肩をおとす。こうなると思ったから、下手に刺激することは避けるべきだったのに。
「無理。持ってきてないから」
「ええ…!!」
「第一誰にもあげる予定なんて無いから、買ってもないし。ああ…でも、帰りに自分には買うかもしんないけど」
レジ袋の包装を解きながらぶつぶつとこぼしていくわたし。比例して、ストーカー警察の顔から覇気が薄れていくのを感じた。