恋は思案の外
先刻の店長よろしく背中を丸めて帰っていくショウヤを見送りつつ、なんでこんなにも皆チョコをもらいたがるのかと不思議に思う。
食べたければ、自分で買えばいいのに。時期が時期だからどこもセール中でお得に買えるでしょ、今なら。ほら、今でしょ!(やっぱり言った)
どれくらい時間が経ったのだろう。そろそろ自分のシフトも終りじゃないかと、そう思って店内の時計へと視線を投げかける。
そして最後の仕事だと、溜まったカゴ類を手に自動ドアを潜り抜け、肌をさす外の冷気にぶるりと身を震わせた瞬間。
「浬さん~、これ、いつものお礼ね。少ししか入ってないけど…」
「いやー、おばあちゃん!世話になってるのは俺だってのに、悪いね」
よく見知った姿。よれよれのスウェットはボロボロのコートに覆われていて垣間見れる程度だったけれど、ぼさぼさヘアは相変わらずで。
横に並んでいるのは、スーパーにもよく買いに来てくれる近所住まいのおばあちゃん。
このツーショットを見た途端、ああそうかと合点がいった。
「ほら、こないだのクッションにマフラーも。ほんと助かってるよ、ありがとう」
よくヒト科の家で見掛ける、手編み系のグッズを奴にプレゼントしているというお婆さんの正体が、やっと判ったから。