恋は思案の外
おばあちゃんはつい先ほどスーパーでの買い物を済ませたばかりだ。だからヒト科と挨拶をすませると、自分の家のほうへ曲がっている腰に手をあてて帰っていく。
その様子をじっと見つめていたら、自分が買い物カゴを持ったまま佇んでいたことを失念していた。
「あれ、お姉さん?」
だからヒト科が隣にきたことにも、気付くのが一瞬遅れてしまった。
瞠目したままゆっくりと視線をもちあげたわたしの眸に、不思議そうな顔をしたヒト科の満面が映り込む。
「……いいひとだね」
「そうなんだよ~。俺いっつも何かもらってばっかで、って…お姉さん?」
「きて。いいから」
「うおっ、ちょっとちょっとちょっと!どうしたんだよ、いろはちゃん積極的~!」
誰に物欲しげな目をされたって、チョコをあげようなんて気にならなかったのに。
さっきコイツに可愛らしい紙袋を渡したおばあちゃんの姿が、何故か脳裏から離れなくて。
ヒト科のコートを引っ掴んで店内に引き摺りこむ。そして、その足で事務所に赴き退勤をすませてから再度わたしが目指した場所、それは──
「どれでもいいから選んで。高いのはダメだけど」
「くれんの!?つーか作ってよ、いろはの手作りチョコ食いてぇ」