恋は思案の外
お返しはあまいあまい
バレンタインのあの日。
ヒト科が選んだのはマカダミアナッツ入りチョコだった。
10粒入り。298円。税込み。
頭を抱えウンウン唸りながらアーモンド入りとすごく悩んでいた。
◆
……すごくどうでもいいから早く選んでくれ。
そのときのわたしはヒト科の隣で白目をむきそうになっていた。いや、もうむいていたかもしれない。
だってヒト科の唸り声があまりにも大きくて、店内にいるお客様が何事かとチラチラ確認しながら通り過ぎていくんだもん。
訝しげな視線とひそひそ声の痛さったらない。
それに加えて店長が遠くでニヤニヤしているのも見えた。
特設コーナー近くの店内の柱の向こう。その柱で姿を隠しているつもりなのだろうが、わたしからは丸見えのもろバレである。
死角になっているとでも思ったか!!あぁん!!?
キッと睨みを利かせると、慌てた様子で口許を手で覆い仕事に戻っていった。
「ねーねー、お姉さんはどっちがいい?」
「どっちでもいいから早く選んで」
「いややっぱバレンタインだし?お姉さんが選んでくれないと!」
目の前にずいっとマカダミアチョコ、アーモンドチョコの箱を差し出される。
もう本当にどうでもいい。
どうでもいいから早くこの場所から抜け出して帰りたい。帰ってビール飲みたい。
お願い帰らせて!