恋は思案の外
「あーーーもう!じゃあマカダミア!」
「じゃあアーモンドにしよ~っと」
「おいどういうことだゴルァ」
「いひゃいいひゃい!ちょ、笑顔でほっぺた引っ張らないでおねえさあああん!!」
人に質問しといて違う方を選ぶとはどういうことだ!
実に憎たらしい…!腹立たしいったらありゃしない!!
わたしは早く帰りたいんだ!
帰ってビールとスルメで今日一日の疲れを癒やしたいの!!
自分の持てる全ての力とありったけの殺意を込めてヒト科の頬を引っ張った。酷い顔になっていた。
「結局どっち。アーモンド?」
「マカダミア! ねぇお姉さん!ほっぺた!千切れそう!!」
「千切って魚の餌にしようかなって」
「やだやだダメダメ!!俺のほっぺたには某パンヒーローみたいに餡こ詰まってないから!!」
「え?なに?鳥がいいの?」
「鳥もダメ!!! あれ?ねぇ痛くて涙が出てきた!!」
仕方なく手を離してあげると、ヒト科は涙目になりながら赤くなった頬を擦る。
イテテ、と痛そうに呟くからちょっと悪いことしたかな、なんて思ったけど。
すぐにチョコレートを選びだしたからそんなこと杞憂だったんだろう。
「これにしよっかな~」
「……これ?」
「だってよー、なんと298円!」
「……そうだね」
「298で『ニクヤ(肉屋)』!俺チャリ屋なのによー!」
「…………はぁ???」
人間って本当にわけがわからなかったときってこういう声が出るんだね。
「マジでウケるわー!」――そう言ってゲラゲラと笑うヒト科のツボがわたしにはこれっぽっちもわからなかった。
え?あ、いやいやいや!別にわかりたくないんだけどね!!?
わからなくていい!!これから先、一生わからなくていい!!!