恋は思案の外



(少し仮眠をとろう…)


事務所に入ってすぐに、硬くて冷たいテーブルに突っ伏す。
少しの騒音と、程よく効いた空調が自身を包み込んだ。

あぁ…これはすぐにでも眠れそう…。

突っ伏してものの数秒。
もう眠りにつけそうだった、そのとき。



「お・ね・え・さ・ん」

「…………」

「お姉さん?」

「…………」

「ちょ、お姉さん!?無視しないで!」

「…………」

「バレバレな狸寝入り~~!! ハイ、起きて!グッモーニンッ!!」



……誰か嘘だと言って。
現実ならこいつを今すぐ追い返して。

ゆっさゆっさと激しく肩を揺さぶられた挙げ句、耳元で大声で叫ばれて。
眠れる人間がどこにいるのか。



「見てわかんない!?わたし休憩してんの!!今から寝るの!!!」

「あ、おはよう。 結婚する?」

「帰れ!!!!!!」



……あぁ。頭が痛い。

文字通り頭を抱えながら、盛大なため息を吐いてやった。
だけどボサボサダルダルヒト科にはわたしの渾身の迷惑顔は通じない。



「さて、今日は何の日でしょう!」

「…………」

「ピンポーン! っていやいやいや!なんか返事して!!」



無視して再び眠る体制に入ったのにこのヒト科はほんと…!
肩を掴むな!揺らすな!うるさい!黙れ!!


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