恋は思案の外
「あー!もうっ!何!何なの!!」
イライラがノンストップなわたしのことなぞ気にもとめないヒト科にさらに腹が立って。
つい相手をしてしまった自分の口を瞬時に呪った。
ぐうう、と唸りながらテーブルの上で手を握りしめる。
完全にヒト科のペースだ。ありえない。
「ほら、」
――コトリ。
後悔の念に襲われるわたしの目の前に置かれたソレ。
「………なにこれ」
「ホワイトデー」
「は?」
そういえば今日って3月…14日…?
頭からすっかり抜け落ちていたけれど、そういえばスーパーの端に小さなホワイトデーコーナーがあったような?
え? ていうか、なんで?
これ、わたしに?
バッと振り向いた先には、腕組みをして得意げな顔をしているヒト科がいる。
「バレンタインのお返し。」
お返し?いやでもわたしがあげたのって――
この事務所に来る前。
レジに立って眠りこけていたときに見た夢が徐々に蘇る。
298円。
肉屋なマカダミアチョコ。
10粒入り。
その場の勢いで買った、あんな安上がりなものに対して?
キラキラと光るそれを見つめる。
女の子受けしそうな可愛らしい小瓶。
中には小粒で色とりどりの飴が入っている。
これをコイツが買ったの?
どこで?どうして?
一体どんな思いで、どんな顔をして買ったの?
ぐるぐると巡る思考に、もちろん答えなんて出ない。