恋は思案の外




「ちょっとちょっと、どうしたのそのネコ!」

「いやー、近所でダンボール詰めにされて捨てられててな。こりゃもう俺のところに来るべくして待ってたんじゃねぇかって」

「…アンタ生き物の面倒見れんの…?」

「オイオイ、お姉さん俺のことなんだと思ってんの?地球人よ?異星人かなんかだと思ってねぇ?」

「いやさすがにそれは思ったことないけどさ…」




チラリ、視線を下げると変わらず此方を見つめる真ん丸の瞳。「ウニャー!」拘束されるのにそろそろ疲れてきたのか、ヒト科の手の中で身を捩ってくねくねしてる。……か、可愛い。

それはヒト科も感じていたのか、徐《おもむろ》に立ち上がった奴に倣ってその背に続く。

チャリ屋奥の四畳半の和室―――お馴染みのその部屋にたどり着いた時、思わず「んな!」と声を上げてしまったわたしは正常だと信じたい。


< 119 / 132 >

この作品をシェア

pagetop