恋は思案の外
春の嵐は台風並みです
うん。
確かにお天気お姉さんは散々言ってた。
『週末は暴風に警戒して下さい。大雨にも警戒が必要です。雷を伴い、非常に激しく降るところがあるでしょう。』
忘れてたわけじゃない。
ただ、昨日は本当に晴天だったからちょっと信じがたかっただけで。
お姉さん大袈裟に言いすぎだよ、なんて。
何だかんだそんなに悪天候になるはずがない、なんて。……思ってたんです。
「うわお。」
轟々と唸る風。
それに便乗するように大きく揺れる木、「大売出し」とでかでか書かれたのぼり旗。
遠く遠く飛ばされてしまう、ピンクの花弁。
「これはまた、想像以上の……」
スーパーの窓から見える外の様子は、昨日までの春空とは一変して大荒れだった。
週末だけどさすがにこんな天気で外に出る人なんて、そうそういないらしい。
加えてこんな田舎町のちっちゃいスーパーだ。
お客様もまばらにしか来ないし、もう閉店でいいんじゃないかと思うけど。
「はあ。」
「お困りですかお姉さん。」
無事に帰れるかな、なんてレジに立ち外を見ながら盛大な溜息を吐いたとき。
それに応えるここ数日で聞き慣れた声と、ひょっこり視界に入ってきた揺れるぼさぼさの黒髪。
「……帰れ。」
「いやいやいや、俺一応お客様なんです」
そう言ってレジカウンターに商品であるパックの飲み物をどんっと置いたヒト科をこのまま無視するわけにもいかないので(一応お客様らしいからね)、嫌々接客をする羽目になった。