恋は思案の外



「『いろはは浬さんと結婚すること』!!これ付け加えといて!!!」

「か、浬さぁん」



ただ、店長だけが泣きそうな声でヒト科のことを宥(なだ)めようとしていた。

それでもヒト科は店長の必死な声に全く耳を傾けず、ギャーギャーと喚(わめ)き散らす。


もうダメだ、最後の手段。


そう言わんばかりに、情けない顔でわたしへ視線を寄越す店長。

その視線に気づかないフリをして回れ右をした、そのとき。



ガシッ。


「お姉さん、確保。」

「イヤあああああ!!!!!」




わたしの肩を掴むその悪魔のような手から逃げようと、ジタバタと手足を動かすが意味をなさず。

どうせわたしの肩越しにニヤリと悪戯な笑みを浮かべているんだろう。


ピュウと口笛を吹くヒト科に、そのままズルズルと事務室へ連行された。


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