恋は思案の外
「ウェディングドレスが白の意味を」
「すっごいどうでもいいから戻ってもいい?」
ふと顔を上げてわたしをじっと見てきたヒト科の、その視線がちょっと怖くて。
思わずゴクリと息を呑んだのに、なんだその今は話す必要がない話題。
「白っつーのはさ、何にも染められてないわけ」
深い溜息を吐いて踵を返したにもかかわらず、わたしの背中に声がかかる。
いや、聞く気がない相手のことを気にせず話し始めるのすごいな?
「そんで、ここからが感動するんだけど」
そこで話を一旦区切ると、いきなり立ち上がるヒト科。
そうしてわたしの目の前まで来ると、わたしと視線を合わせるように屈んだ。
かと思うと。
「な、ちょっ、 ち、近い…!」
「白のウェディングドレスは”あなた色に染まります”っつって」
息がかかるほど近く。
ヒト科の顔がわたしの瞳に映る。
代わりに、ヒト科の瞳には動揺したわたしが映っているように感じた。