恋は思案の外



         ◇



残念ながら今日は丸一日のシフトの日だった。




『鳳いろは。午後から帰らせていただきま──』

『逃がさないよ!?』




ゾンビのようにミイラのようにやつれ切った店長が離してくれず、結局こうして店を出てみればもう夕暮れ。



くそう、シフト希望を出した時のわたしが憎い!

どうせ「暇だからフルでいっか~(鼻ほじ)」みたいなノリで書いたんだろ!バカなのか!うんバカだね!!




哀しみを前面に押し出しながら、愛しのハヤテ号をカラカラと転がして帰路をゆく。

そんな道すがらでも満開の桜たちはわたしに甘い誘いをしてきていて、ちょっと遠回りすればお花見スポットとして有名な川縁《かわべり》があることを思い出した。



まだ日が沈み切るまでには1時間弱ほどある気がする。

シフト帰りに日課として購入した缶ビールとスルメ。せめてそれだけでも楽しんでやろうと、息巻いてその場所に向かっていたわたしだったけれど。



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