恋は思案の外
「98円になりまーす」
「ねぇねぇお姉さん。何に困ってるの?お兄さんに教えてよ」
「98円でーす」
「あぁ、今日酷い天気だもんなぁ。帰れるか困ってるとか?」
「100円お預かりしまーす」
「一緒に帰ってやろうか? お、いいじゃん俺ナイスアイディーア!ってことで一緒に帰――」
「2円のお返しでーす。 永久にさようなら。」
「ちょ、てんちょー!?ここの接客マニュアルどうなってんの!!?あまりにも教育できてないんですけどぉ!!」
ギャーギャー騒ぐ目の前のヒト科に、寝不足の頭がガンガンする。いや、寝不足じゃなくても頭痛がすると思うけど。
「お店では騒がずに静かにしていてください。」
「じゃあお兄さんと会話してよ」
……はあ、もう。すっげぇめんどくせーよ…。
っていうかこの男、今日もダレたスウェットかよ!しかもこんな大荒れの日にも関わらず健康サンダルなの!?びちょびちょのぐちょぐちょでしょうよ!!
「……アンタ店番どうしたの」
「ん? んなもんテキトーだよ」
「はよ店戻れ!」
「だいじょーぶだいじょーぶ!こんな日に客なんて来ねぇから!」
いや、こんな天気だからこそチャリが壊れて修理に来るひと多そうなんだけど。
と言いたいところをぐっと我慢して(なんか面倒くさいから)、優しいわたしはさっきの質問に答えてあげることにした。