恋は思案の外
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「ただいまー」
「おいカイリ!どこ行ってたんだよー」
のっそりとした足取りで自転車屋さんの戸(見るからに建て付けが悪そう)をガラリと引っ張ったヒト科は、それと同時に鼓膜に入り込んできた声音に大袈裟なほど顔を顰めてみせる。
釣られるようにして中を覗き込むわたし。
その瞬間にも呻る風は激しさを増していて、「寒いから早く閉めて!」という子供の声に迫り立てられるように戸をガッチリと閉めた。
「(ていうか、)」
こんなときまで子供に店番させてたのかよ。
さっきわたしの胸中を温めた言動はきっと気の所為だな。うん、間違いない。
「おー、悪いなユウタ。飴ちゃんやるから機嫌直せって」
「俺ユウヤだよ!タクミも言ってたけど、いつになったら俺らの名前おぼえるんだよ。それに俺が欲しいのはプラモだって!ニューガ○ダムのプラモだって!」
「そうだったか?悪かったな、タクヤ」
「ユウヤ!」
ぷんぷんと怒りを露わにする子供を宥めるヒト科を、白けた視線で見つめるわたし。
ていうか、この子どうすんの?帰れなくない?この嵐の中どうやって帰らせるの?
「――――ねえ、アンタ」