恋は思案の外
胸中で溜まりきった疑問を消化するべく言葉にするわたしを、視線だけで捉えた男にドキリと心臓が音を立てる。
その、流し目みたいな視線ちょっと、苦手かもしれない。
どきまぎと視線を泳がせるわたしだったけれど、「その子どうすんの」と何食わぬ表情で口にできたような気がして安堵した。
よくやった、この男に隙を見せたら駄目だぞわたし。
――――と、
「あ」
そんな間抜けな声音で此方の問い掛けに答えた男に、心底溜め息を吐き出したくなった。
だってその反応を見せるってことは―――
「忘れてた」
後続する台詞はそれだろうと、容易に予測が付いたから。
「うわぁ……」
戸棚を開けたわたしは、思わず眉根を寄せてそんな声を洩らす。
視界全てを占領するカップ麺に、ヒト科の生活習慣を垣間見た気がしたからだ。
ついでに言うと、冷蔵庫は既に確認済み。ビールしか入ってなかったよコノヤロー。
のっそりと持ち上げた視線の先でヒト科と子供を認めれば、彼らは何やら放送中のアニメに夢中になっているらしく。
ていうかその子の両親、今頃死ぬほど心配してるんじゃないの?
チャリンコ屋の主人が誘拐犯として逮捕されたら、なんて強ち否定しきれない想像を膨らませてみる。