恋は思案の外
「な、んでこんなところに居るのよ!」
「なんでって、アイツもう帰ったし」
「………怒らなかったわけ? モンスターペアレンツ」
「モンスター…、なんだ? 初めてじゃねぇからな、ここにアイツ上げるの」
どぎまぎと不安を口にしたわたしを、至極不思議だとでも言うような表情で見上げるヒト科。
その視線を受けて再度自らの姿勢を思い出す。
な、何がどうなってこうなったヘイ教官!(混乱)
慌ててスウェット男から離れようと腰を上げ―――ようとした、瞬間だった。
「待てって」
「ちょッ、」
片手だけで此方の腰をぐんと引き寄せたヒト科に、愕然と目を見開くわたし。
ダボダボなスウェットが普段着の癖に、鼻腔を掠めるシャンプーらしき香りにクラリと脳が揺れた気がした。
再度立ち上がろうと足掻くものの、男の力に比べてわたしの其れなんて微々たるものに他ならない。
「――――このままイケないことしちゃう?いろはチャン」
「なっ、わたしの名前……!」
離れるどころか更に縮まった距離は既にゼロに近付いていて、今にも触れてしまいそうな鼻先に鼓動は早鐘を打ち始める。