恋は思案の外






そんな男の意味不明な行動を見つめるわたしの表情も悲惨なものだった。

阿呆みたいに口を半開きにし、今にもむいてしまうそうな白目を必死で押さえ込む。




「ちょ、………アンタ……」






恥ずかしいやら悲しいやら虚しいやら、この終わりの見えない感情の処理はどうすれば!

手をプルプルと震わせて男の後ろ姿へと伸ばすものの、至ってマイペースなヒト科が気付くことはない。

それどころか、



「うっひょーあった!今週のジャ○プ買ったのに無くしちまってよー。もうすっげ探してたんだわ」

「うっひょーじゃねえよゲス野郎!」

「いろはちゃん恐ーーーい」

「名前で呼ぶんじゃありません」










ゆらりと立ち上がるなりクッションを手に取ったわたしを見て、コテンと首を傾げた男相手に片眉が吊り上がる。

なんだこのボサボサだぼだぼスウェット男!




「そうか。俺だけ名前言ってなかったもんな、それでか」

「それでか、じゃないっつーのォ!どんだけお目出度い思考回路なんだよ!」

「俺は浬《かいり》ってんだ。よろしこ―――」







「聞いてないっつーの!!」








ヒト科が言葉を紡ぎきる前に投げつけたクッションがその顔面にクリーンヒットし、破れたところから羽毛がたくさん飛び出す始末。

強風さん、お願いですから早くわたしを家に帰らせてください。







        *saki






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