恋は思案の外
チクタク、と。
安っぽい音で鳴る壁掛け時計が、この4畳の狭い部屋に響く。
それはもう、18時を刻んだ。
――嗚呼、でも鳴り響くのはそれだけじゃない。
男が無くしてしまったという今週号のジャ○プを見つけてしまってから、ずっと。
「………。」
「ヒイッ!何この展開!ヒャーハッハッ!」
わたしの無言と男の気持ち悪い独り言が、ずっと。
「………。」
「ひょえー! そこでそう来る!?そう来ちゃうの!へぇー!」
「(帰りたい……。)」
わたしを放置して雑誌に夢中になる男の背中を、部屋の隅のほうでひと睨みしたが。
一応ヒトの家だし。
リラックスも出来ないし、何もすることがない。
男に投げ付けたクッションから飛び出た羽毛を指先で弄りながら、暇だとは思うけれど。
寂しいとか、そんなことは断じて思っていない。
「あっ!」
「!? なっ、何!いきなり大きい声出さないでよ!」
男の突然の大声に、びくうっと大袈裟なくらい肩を上げてしまったのを恥ずかしく思いながら、負けないくらい声を張り上げると。
そいつはわたしを振り返って、まるで捨てられた子犬みたいに眉を下げ、瞳を潤ませて言い放つ。