恋は思案の外
「ち、ちち、ちゅーとか言うな!そしてわたしの口に触るなケダモノおおお!!」
「あ? 今更ちゅーくらいで恥ずかしがる歳じゃ――…ぐはっ!、」
最後の抵抗とばかりに男の言葉を遮ってその腹に自慢の右手を埋め込むと、唸る男の「お姉さぁん」という情けない声を背中に受けながらわたしは部屋を飛び出した。
突然現れた嵐のような男。
台風のように荒くて激しくて、だけどたまに静かで穏やかな時を与えて。
「なに、これ…っ、」
夢の様な一夜が明けた、今日。
透き通るような青の広がる春のなか、口元を手で覆って街を駈け出した。
春の嵐は台風並みです
(泊めてくれたお礼、とか絶対してやらん!)
* imu